その人は、どんどん近づいてきて、 さとみの目前まで来る。 ドキ え? 近い。 フワッと空気が揺れたのが分かるくらい 近くに 弟さんの瞳。 「葛西駿(しゅん)です。 兄貴がお世話になっています」 駿が、さとみに視線を合わせるように、 しゃがんで言った。 ああ、ちょっと社長に似た、 口の端だけあげた笑顔。