社長がさとみの腕を持って、軽々と引き上げる。



濡れて下りた前髪に、



半ば隠れたような瞳が近くてドキドキする。



「あっ。お茶が、すいません。拭かなきゃ」



キッチンのフローリングが



こぼれたお茶で濡れている。



動こうとするさとみ。



「そんなことより」



社長がさとみの腰を、ひょいっと、持ち上げた。



え?。何ツ。



男の人の骨張った指の感触に



その力強さに



ドギマギするさとみをよそに。



社長はキッチンのカウンターに、さとみを座らせる。



「真っ赤になってる」



社長の大きな手が、さとみの膝に触れる。



ぴくっ。



さとみの足が過剰に反応しちゃう。



「ああ、ごめん。痛かったか?」



意外に優しい社長の声。



キッチンのカウンターに座ったことで、



目線が同じ高さになった社長の目を避けるように



さとみは無言で首をふる。



社長が近くて、焦ってしまう。



近いよ、社長。



社長は平気なんだろうけど、



私は、



私の心臓がうるさいよお。



やばいよぉ。


むき出しの足を触られて、恥ずかしくて、



こんなにも



ドキドキしているなんて



社長に気づかれたくない。



すごい緊張の汗かいている。



何なのこれ。



社長が冷蔵庫から氷を出して、



それをタオルで包んで、膝にあててくれる。



また、身体が勝手に



ピクって反応しちゃう。