社長がしゃがみこむ。
「何やってるんだ」
冷めたような声が、頭に降ってくる。
その社長の冷静さに
ますます、恥ずかしくなる。
きっと、社長はあきれてる。
そうさとみが思ったとき
「ふっ」
社長の変な声に、さとみが顔をあげる。
こらえきれずに、社長が笑いだした。
「ふはははっ」
「子供みたいだな」
「痛かったろ、すごいこけかた。ふっ、はは」
まだ、笑っている。
さとみは笑われたことより、
社長の笑顔に目を奪われた。
いつもの怖いくらいクールな表情とは、別人で。
りりしく、いつも上がり気味の眉毛が
目元と同じように
丸いカーブをえがき
目じりを下げていて、
その目のしたで、
両端がくっきり上がった口が
大きく笑っている。
無邪気と言えるほど
かわいい笑顔に目が離せない。
初めて社長の笑った顔見た。