「大体、いつもビシっとしていますよ。





こんな顔して、





難しそうな新聞読んでいたり、





パソコンで何か、仕事していたり。」





さとみが社長のマネで、





眉毛をぐっと寄せてみせる。




駿が嬉しそうに笑う。




「後、甘いものは好きじゃないのに。




冷蔵庫に常備してあるスイーツが




一個だけあって




宇治抹茶のお団子!




この前食べているの、盗み見たんですけど。




すっごい、大事そうに食べるから」




さとみが集めたなんてことない、




誰にも言えなかった




“今日の社長”話。




駿は、嬉しそうに聞いてくれる。




そう。ほんと、嬉しそうに。





「知らなかったですか?」




さとみが不思議に思って、尋ねる。




駿が目を細めて答える。




「兄貴は中学校から、




寮だったから。




実際に、一緒に暮らしたのは、




兄貴が小学校の時までなんだよ。」




「それからずっと?」




「ああ。




兄貴は、中高一貫の学校行ったから。




その後は海外だったし。




働きだしてからは、




いろんな葛西の支社に飛んで、




業績伸ばしまくってるしな。




…すげえひとだから」





社長の話ができて、うれしいのに




私が知らない社長が知れて




お酒も飲みやすくて、




美味しくて




料理なんか




今まで、食べたことないようなものばかりで




すごい、ぜいたくで




駿さんはよく笑って、




楽しくて




なのに、




楽しいのに、




どこか痛くて




分かっていたつもりなのに、




再確認させられる。




こんなにも世界が違うひとだって。




社長と私の世界の距離に




胸の奥が痛い。




痛いのに




それなのに、




今社長に会いたい。




すごく社長に、会いたい。




そう思う自分がいるの。