さとみが、落ち着かなげに席に座っていると、
駿が入ってきた。
何から伝えたらいいのでしょう…。
さとみは頭をかかえそうになる。
社長の弟さんに、
こんな高級そうなごはんを奢ってもらうわけには
いかないこと。
けれど、
多分わたしが払えるようなとこではないこと。
何このゼロの数。
そして、メニューが全く読めないこと。
何語?イタリア語?。
作法もわからないこと。
社長とは、本当に付き合っていないこと。
じゃあ、どんな関係かって。
詳しくは言えないこと。
…何からどう、伝えれば。
「あの、わたし」
こんなとこおごってもらえない?
おごってもらう前提?
厚かましいよね。
払えない?
えーん。
何て言ったらいいの。
「社長の弟さんに、
こんなごはん連れてきてもらえるような、
立場じゃないんです」
言葉を選びながら、さとみが告げる。