カタカタ。
キーボードの音が絶え間なく続く。
さとみは、パソコンの画面に視線を落として、
資料を作っている。
会議に必要なので、
今日の三時までに、完成させなければならない。
「え。うそ」
「きゃー。」
「かっこいい」
遠くで女のひとたちの声。
それでも、視線をあげないさとみ。
けれど、まわりのざわめきが大きくなって。
なに?
さとみが画面から目を上げる。
長身で、王子様みたいな綺麗なひと。
が、近づいてくる。
え?
弟さん?
駿が、時折
他の女子社員に微笑みかけながら、
さとみの方に歩いてくる。
嘘でしょ、
まわりがみんな見ている。
駿がさとみの前で立ち止まる。
「探したよ。さとみちゃん」
その言葉にかぶせるように、
さとみが慌てて言った。
「え?食堂ですか、ご案内します」
さとみが駿を引っ張るように、職場から連れ出した。