新校舎の2階。
1年4組。
教室の前。
「じゃ、入るよ?」
小さな声で言った言葉は自分に向けての言葉か、幸人くんに向けての言葉か、私には判別する余裕がないくらいに緊張をしていた。
遠慮がちな手つきで教室の扉を開ける。
カラカラカラ、と高くて軽い音がした。
「頑張れ」
隣で幸人くんが小声で応援してくれる。
私は教室に足を踏み入れた。
はじめて入る、高校の教室。
はじめての場所なのに、どこか懐かしさを感じた。
「--誰?あの子……?」
「クラス、間違ってるんじゃねーの?」
教室内にいる初対面のクラスメートが、私を見て戸惑っている。
「葵の席、ここ!」
幸人くんが窓側から3列目の、前から6番目の席に連れて行ってくれた。
1番後ろの席に、少し安心する。