「それは……」

「オレ、今日めちゃめちゃ楽しいよ」
「え?」


「今日は頑張ってくれて、ありがとう」



私は幸人くんの優しい笑顔を見て、両目に涙があふれてきた。
「……うぅー」
子供みたいな声を出して、泣いてしまう。
「あははははっ、何だよその声」
「幸人くんが泣かせたんじゃーん」


不思議だった。
さっきまでは弱い自分が悔しかったのに。

幸人くんの言葉でひっくり返っちゃったみたい。



ほんの少しかもしれないけれど、私も頑張ったんだ。







少し休んだあと、電車に乗って家まで帰ってきた。
家の玄関を開ける前。
幸人くんは改まった声で言った。

「中学時代の奴に会ってしまった時さ……」