「……なんで」
私は呟いた。

「なんで、私……、こんなに弱いんだろう」


行きに駅の前でも女の子を見かけて不安になった。
高校の前でも人の声にビクついた。

あの女の子達。
名前だって出てこないくらいなのに。
怖くて体が強張ってしまった。


幸人くんに迷惑をかけたくなんてないのに。
今日は楽しいお出かけにしたかったのに。


「弱くないって」
幸人くんは座ったまま私と視線が同じ高さになるように、腰をかがめた。
「葵は強い!」
「そんなことないよ」

「そう?だって今まで近所の公園を往復するくらいしか外出してなかったのに、今日はいきなり電車に乗ったし、高校までちゃんと行けたじゃん」