右手で拳を作り、強引に涙を拭く。

「私、学校に行く」
涙声だったけれどハッキリと言った。
「次は制服を着て、ここまでくる。それで授業も受けて、帰り道に幸人くんとコロッケ食べるんだ」

「うん、一緒に頑張ろう」
幸人くんはキャップの上から私の頭を優しく撫でてくれた。


背中のほうで複数人の声が聞こえる。
少しビクッとしてしまった。

同じ高校の生徒らしい。
制服を着ていて、部活バッグを下げている。

「体育祭って家の人、誰かくる?」
「誰も。ってか、体育祭あるって言ってないかも」
「マジかー、オレんち両親共くるってよ。うぜぇわ」
「……とか言って、嬉しそうじゃん」

校門を通って校舎のほうへ歩いていく後ろ姿を見送りつつ、私は思い出していた。