「だって、『可愛い』とか言うしっ、こんなイカつい奴に向かって」

「えー?」
何が笑いのツボなのかわからないままだったけれど、私も自然に口角が上がった。
幸人くんは全然イカつくないけどな、と思ったけれど、それは言わないことにした。



そんなやり取りをしているとすぐに駅の券売機の前まできていた。

少し前に先を歩く女の子を見て、少しでもつらくなったことが嘘みたい。


私は不思議な気持ちのまま、改札口を通った。




それから。
高校がある街の駅には10分程度で着いた。

「まず学校の近くまで行こっか」
幸人くんと並んで、改札口を出た。

「受験日にも思ったけれど、大きな駅だよね」
迷子になるんじゃないかと思いつつ、素直に感想を言ってみる。