「ここ?」
特に何もない気がする。
いつもと変わらない、人の気配がしない場所のように思えた。


「葵とふたりきりになりたかったから」
そう言って微笑んだ幸人くんに、心臓がドキッとした。

幸人くんは階段の踊り場に座り、屋上に続くドアに設けられた窓から空を見上げた。
「この先には行けないのが残念」
私も幸人くんの隣に腰を下ろす。

「幸人くん、ジュースは何味にしたの?」
「オレ?ソーダ味。葵は?」
「オレンジにしたよ」
「オレンジジュース、好きだよな」
幸人くんは笑った。

私はその笑顔にドキドキする。


いつも見ていた幸人くんの笑顔。
いつもそばにいてくれた。
ずっと支えてくれた。

大好きな気持ちがあふれてくる。