「今までろくに話そうともしなかったくせに」
そう毒づいてから桜井さんはもう1度ため息を吐いて、
「ちょっとだけ時間ある?ここじゃ、通行の邪魔になるから」
と駅のロータリーのベンチのほうへ歩き出した。
ベンチに桜井さんがどっかりと座る。
「どう話せばいいかな」
ぼそっと呟いて、
「……ま、要するに私、引っ越すのよ」
とあっさりとした様子で言った。
「引っ越すの?」
思ってもみなかった言葉に、私は目を丸くした。
「あんたとのことで親とうまくいかなくなったんだ。家にいても居場所なんかないし、高校には友達がいるけど、最近ちょっと合わないんだよね」
桜井さんはうつむく。
高校の友達って、あの公園の前に桜井さんと一緒にいた人達のことかな、とぼんやり考える。