私には友チョコを贈り合う仲良しな友達がいないし、告白する相手だっていない。
全く関係のないイベントだ。
「越野さんは誰かにあげるの?」
ふいにクラスメートの男子に声をかけられた。
「……べつに」
一応、返事する。
「そっかー」
男子はそれだけ言って私から離れていき、また別の女子に同じようなことを聞いて回っていた。
そわそわしているのは女子だけではないらしい。
「私、今日こそ両想いになるから!」
教室の窓側の席からハッキリした声で宣言したのは桜井さんだった。
「田島くんは絶対に私の告白を待ってるんだと思う。好きな子に告白したいって言ってたくせに、何にも言ってこないのは勇気がまだ出せないってことでしょ。なんか可愛いよねー」