「……だから、葵がいじめられてることを知らなくて、助けてあげられなくて、何もしてあげられなくて……本当にごめん」

幸人くんの目が赤くなっていく。

「ごめん、葵……。ずっと謝りたかった」


「幸人くんは悪くないもん」
私はそう言って、幸人くんに1歩近づいた。


抱きしめたい。
そう思った。

でも、私はそうしなかった。
出来なかった。



いつも堂々としている幸人くんが、まるで小さな子供みたいに見える。
力いっぱい抱きしめたら、壊れてしまいそう。

「幸人くん、ありがとう」
そう言って私は背伸びして幸人くんの頬を伝う涙を指で拭った。


「……オレ、カッコ悪いね」
そう言って幸人くんは涙を流しながら笑った。