足はギリギリ届くけれど、浮き輪があったほうが嬉しい。
「借りようかな」
私がそう言うと、
「待ってて」
と幸人くんがプールからあがった。

ひとりで水の冷たさに感動しながら待っていると、
「一緒に泳がない?」
と知らない男の人が声をかけてきた。
「友達ときているので」
私はやんわりと断った。

「あー、友達も一緒で全然いいよぉ。一緒に泳ぎたいなぁ」
「困ります」
今度はきっぱりと言う。
「可愛いよね、モテるんじゃない?彼氏とかいるの?」


「お待たせ!」
幸人くんの不機嫌そうな声が響く。
「……ゲッ、友達って男かよ」
知らない男の人は泳いでどこかに行った。

その男の人を冷たい目で見ていた幸人くんが、
「マジで危険だな」
と呟く。