「暑いな」
幸人くんが手をパタパタして、うちわみたいに(あお)ぐ仕草をする。
「もう7月だもんね」
「もうすぐ夏休みじゃん」
「……あ、そっか」
夏休みがくるなんてこと、考えてなかった。
何だかずっと学校が続くような気がしていたから。

ホームに電車が着き、私達は空いていた座席を見つけて座る。

「葵は夏休み、どうすんの?」
「え、どうしよう……」
私は心底困った顔をしていたんだと思う。
「ん?」
幸人くんが不思議そうな顔をした。
「だって夏休みのこと忘れてたから……」
私の言葉に、幸人くんは「あはっ」と笑った。

「じゃあ、オレと遊ぼうよ」

「え?」
「葵の行きたいところに行って遊ぼう!」