「…!?」

気づいた時には莉乃さんの細い腕に囚われていた私の首に、ナイフの先端が向けられている。

「ちょっとでも動いたら、この子を刺すわ…!」

「……っ…」

莉乃さんが黒崎先輩に向かってそう言うと、先輩はそのまま固まって動けなくなった。
そして眉間にシワがよって、苦しそうな表情になっていく。

このままじゃまた先輩は自分のせいにしてしまう。

「黒崎くん、あなたのお父さん、弁護士だったのね…
夏目はそれを隠してたわ…! 私のことを調べさせて、私を捕まえるためにわざと!」

私にナイフを突きつけたまま、先輩から距離をとって話し出す莉乃さん。
私は話を聞きながらも、抜け出す瞬間を見計らっていた。

「もう終わりよ…さっきあなたのお父さんから連絡があった……

私が渡部くんにしたこと、証拠は全てあると。
ご丁寧に写真まで送ってきたわ…お金で隠せたとしても、世間は騙せませんよって。
お父様にも知られてしまった……もう私の顔を見てくれない。
本当に、二度と愛してもらえない……

だから…黒崎くん、私と一緒に死んでくれない…?」

「…!?」

「…っ…」

私と一緒に、死んでくれない…?

「一緒に死んでくれるなら、この子には何もしない。 だからお願い……」

「ふざけん、なああぁっ!」

「…っ…!?」

我慢ならなくなった私は、思いっきり莉乃さんのお腹に肘で攻撃をかました。