「……篠塚に、なんもされてねぇか…?」

「あ、はい…! 執事さんもここまでご丁寧に抱っこして運んでくれましたし、ただ閉じ込められてただけで何も…」

「なんだって…?」

なぜか低音ボイスの黒崎先輩は、私の肩からバッと頭を上げ私を見ている。

「抱っこ、だと……? あいつも一発殴ってやらないと気が済まねぇ」

そう言って先輩は右手の拳にぐぐっと力を入れた。

「ちょ、先輩!? 抱っこっていうか、私を両手で運んだ感じですよ?」

「はあ…? つまり、お姫様抱っこってやつか?」

「…そ、そうです」

どうして先輩はこんなに怒ってるの…?

「…くそっ、どいつもこいつも……」

ブツブツと何かを唱えているが、やっぱり先輩は怒っていて。

「ここ出るぞ」

「…っ…!?」

そう言って私の体をヒョイっと軽々持ち上げる黒崎先輩。
そして階段を上がっていく。

こ、これは…まさしくお姫様抱っこ……

「先輩…っ、私もう歩けます…!
雷も止まったし、先輩が来てくれたおかげで体の震えも治りました…っ!」

真下から見る黒崎先輩がまたキラキラでかっこよすぎて、心臓が破壊してしまうほどうるさい。

大好きな人からされると、こんなに違うなんて……

「うるさい。 花咲小枝は俺の姫だろ」

「……っ…!?!」

な、何を言ってるの…?

黒崎先輩の言葉に私の頭も心臓もパニックを起こしていて、思考回路が停止寸前だ。