「ごめん…ごめん花咲……」

そう言った先輩の声はなぜか辛そうで。

「謝るのは私です…っ…イヤリング失くしてしまって」

「違う…違うんだ……」

「…せんぱい…?」

わからない。
先輩は何に謝ってるの…?

「ずっと、ひどいことばっか言って…傷つけてごめん……」

「……っ…」

それは先輩の家に行った時も聞いた言葉。

「"家族にも親友にも甘やかされて"だとか、"そんなやつ大っ嫌い"だとか、無神経なことばっか言った……」

私は力が緩くなっていた先輩の腕から名残惜しくも離れ、先輩の顔をまっすぐ見つめた。

「…甘やかされて、愛されてきたのは本当です……けど先輩は、わざと私が離れる言い方をしたんですよね…?」

「……」

「それぐらいは頭がちゃらんぽらんの私でも、さすがにわかりますよ…それに、先輩に傷つけられたと思ったことは一度もありません。

だって先輩は…、私に大切な気持ちをくれた、世界で一番、大好きな人ですから」

そう言って笑うと、肩にポスッと先輩のおでこがあたる。

「っ! せ、せんぱい!?」

「先言うな、ばか……」

全神経が肩に集中して火が出そうだ。
突然猫化するの、心臓に悪い。

先輩は、こんなに私の胸がときめいてることも知らないでしょう…?