「誰だ…誰が…!」

「わかりません…顔がよく見えなくて……でもリボンの色から2年生でした。
ただ、去り際に見たその人の手が異常にブルブル震えてて…たぶん、誰かに言われてやったんだと」

顔が青ざめていくような気がした。

あいつだ…
あの女だ……

やっぱり俺はまた、花咲のことも冬夜みたいに、傷つけるのか…?ーー

「先輩! 黒崎先輩…!」

その声にハッとして目の前を見ると、神城の死んだような目が少し大きくなっていた。

「大丈夫ですか? 顔色悪いですけど…」

「あぁ…」

俺は力が抜けたように、掴んでいた神城の肩から両手を落とす。

「あの…町野さんは落ちた後しか見てないから知りませんし、言わないでほしいって言ったのは、先輩たちに心配かけたくなかったんだと思います。

先輩の事情を知っても、背中を押されたことを言わなかったのは、きっと先輩のせいにしたくなかったからじゃないでしょうか……
黒崎先輩に言えば、自分のせいにしてしまうと思ったから」

「…そうだろうな……」

花咲は自分のことより周りを優先する。
それが俺は不安で目が離せなかった。