「俺だって…見たくなかったですよ」
「おまえこそ、あいつの頭に手置いてただろ…」
それはまるで醜い嫉妬の争いみたいだ。
「先輩こそ、ちゃっかり見てんじゃないですよ」
そんな口答えをしてくるが、やはり表情は全く変わらない。
そして悪いけどずっと目が死んでいる。
「…って、俺が一番言いたいのは文句じゃなくて」
「なに」
「一度目が覚めた時に言わないでって言われたんですけど…やっぱ伝えといたほうがいいと思ったんです」
「……花咲か?」
「はい…先輩の話知ってしまったら余計に」
その言葉に俺は眉間に深くシワを寄せた。
「俺、階段から落ちたところを見つけたわけじゃなくて」
神城が話そうとしていることをわかっているかのように、どんどんうるさくなるのは俺の心臓の音。
きっと恐怖で震えることになると、俺は予感していた。
「落ちる瞬間を、見たんです」
「落ちる、瞬間…?」
「階段を踏み外したわけでも、寝不足でフラついたわけでもありません……押されてたんです。 背中を」
「…っ!!」
俺は座っていたイスから勢いよく立ち上がると、神城に詰め寄り両肩を持った。
背中を押された…?
そんなこと花咲は一言も……