薫は「あれ?」と疑問に思った。
昔からフレンチトーストが大好きで、休みの日のブランチは必ずと言っていいほど作っていた。ミキと付き合い始めて数年なのに、彼に、作ってあげたことがなかったのは、おかしいような気がしていた。
「んー!おいしいー!甘い!」
ミキは満面の笑みを浮かべて子どものように嬉しそうに食べてくれている。
そんな姿を見てしまったら、こんな些細な疑問などどうでもよくなってしまった。
ミキは見た目は大人っぽいのに少し子どものようなところがあるなと感じられる。そこが、彼らしいのだけれど。
食事を終えた後、ミキが後片付けをしてくれたので、その間に薫はデートの準備をした。
お化粧をして、フレアのスカートにリブニットのセーターを合わせ、薄手のコートを羽織った。ミキはというと、白のタートルネックに黒の細身のズボン。そして、カーキ色のチェスターコートという服装だった。モデルのような姿に思わずドキッとしてしまう。
「薫、可愛い」
「あ、ありがとう」
お洒落をした薫の姿をまじまじとみたミキは、少し頬を染めながら褒めてくれた。初めてのデートのような反応をされては、薫も驚いてしまう。