薫の地元は、今住んでいる場所から車で2時間ほどにある田舎らしさが残る町だった。電車の駅がある場所はそれなりにビルがあり、住みやすさがある。けれど、少し先を見れば山や海があり、小さな子ども達の遊び場は自然の中という、田舎だった。
薫の両親はまだそこに住んでいるけれど、年末しか帰らないし、子どもの頃に遊んだ山などに登ることはなかった。
薫とミキは、子どもの頃からよく森で遊んでおり、こっそりと夏祭りを抜け出して山の上で星空を見たのを今でも覚えていた。
満点の星空は、いつも見ている星よりも遥かに光り輝いており、見たこともない小さく繊細な光を見せてくれる、淡い星がまだまだたくさんあるのだと薫はその時に知った。
それから、薫は星が好きになった。薫が趣味で書く絵には星空がよく登場するぐらいだった。
「薫?ごはんは?」
「え、あ………あぁ!!………危ない、もうちょっとで焦げちゃうところだった」
薫はすぐにコンロの火を止めて、出来上がったものを皿に装った。
「ミキ、完成したから食べよう!」
「うん!楽しみだなぁー」
ミキは2人の皿をひょいと取って、それをリビングへと持っていってくれる。薫はコーヒーを入れてから彼の元へと向かった。
「薫、食べよう!いただきます!」
「はーい。いただきます」
2人は横にならんで座り、ミキと共に手を合わせて挨拶をした。すると、すぐにフォークを持って、ミキはニコニコと食事を始めた。
「フレンチトースト!食べてみたかったんだっ!」
「え………フレンチトースト初めて作ったっけ?」
「うん。いただきますっ!」