見えなくてもわかる。
いつもミキが2人を待っていた、一番低い木の枝を見つめた。そこには、何もない。けど、会いたかったミキが居るのだ。
『会いに来てくれたんだ。………でも、ごめんね。2人の夢に力を使ってしまって、今は君達の前に姿を見せる力は残っていないんだ』
「ううん………ミキが居るってわかるよ」
「あぁ……ありがとう、ミキ。僕たちに思い出させてくれて」
時雨がそう言うと、ふふふっとミキの笑い声が聞こえた。
そこ声は昔と変わらない。彼らしい澄んだ声だ。
『時雨はしっかり薫と恋人になれたね。ずっと見守ってたけど、なかなか2人は恋人にならないから心配したんだよ』
「……ミキ、見守っててくれたんだ」
『当たり前だよ。僕は時雨と薫が大好きなんだから……』
「………ミキ。薫がとっても大切だって気づいたんだ。おまえの事を忘れてしまっても、俺がおまえの分も薫を幸せにしなきゃって。きっと、そう思ったんだと思う」
『そっか……本当は僕が幸せにしてあげたかったけど、25歳の誕生日までに恋人になるって約束だったから、仕方がないから今回は時雨に譲るよ。でも、薫を泣かせたらすぐに僕が貰う』
「………絶対に泣かせない」
「時雨……ミキ………」
ミキはまた大粒の涙が頬に伝う。すると、頬にミキの指が触れたような気がした。
ハッとすると、『泣かないで、薫』と囁く声が聞こえた。