薫は体力の限界と、落ちてしまうという恐怖に襲われ、泣きそうになっていた。
 
 あと少しで、薫の元へ行ける。
 だから、待っててくれっ!

 そう思った、けれど無惨にも彼女の体がずるずると落ち始め、遂に手を離してしまった。


 「………ぁ…………」
 「………っっ、薫っ!」



 今でも覚えている。
 薫が恐怖で歪む顔を。どうして、友達を助けられないのか。自分のせいで彼女が落ちてしまう。薫が傷ついてしまう。

 必死に手を伸ばしても、届くはず等ないのに、時雨はそんな事しか出来なかった。

 その時だった。森に落ちている葉っぱや柔らかな枝や葉っぱが一気に集まり、薫を包んだ。落ちてしまう場所にも落ち葉が溜まっていたのだ。自然のクッションに薫の体は落ち、衝撃はほとんどなかったようで、彼女はただ驚いてまわりをキョロキョロと見ていた。


 「よ、よかった…………」


 何が起こったのかはわからない。
 けれど、薫が無事ならば安心だ。急いで地上まで降りて薫に駆け寄った。


 「薫!大丈夫か?」
 「うん………葉っぱ達が助けてくれたの」
 「…………なんだったんだ?」
 「僕が助けたんだよ」


 知らない声が木の上の方から聞こえた。
 時雨と薫は、上を見上げる。
 すると、そこには自分と同じぐらいの少年が立っていた。けれど、それは自分達とは違う存在だとすぐにわかった。

 髪は緑で、肌は茶色。そして、何より彼は宙に浮いていたのだ。

 驚く2人を見て、その不思議な少年はニッコリと笑った。


 「僕は楠のミキ、なんだよね?」


 それが、ミキとの出会いだった。