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時雨と薫は気づいたときには、もう友達だった。
家が近かったこともあり、親同士も仲良くよく遊んでいた。そんな事から幼馴染みという関係になっていた。
小学生になる頃。活発だった薫は女友達と遊ぶよりは、時雨たち男友達と遊ぶ方が多かった。そのため、時雨と薫は小学生になるとますます仲が良くなった。
学校帰りは近くの山で遊ぶことが多かった。小さな山だったけれど、頂上には大きな木があり、その木の下で本を読んだり、話をしたり、近くの小川で遊んだり、虫採りをしたりして過ごす事が多くなった。
「やった!今日は俺の勝ちっ!」
「うー………悔しい。あそこで転んでなきゃ抜かせまかもしれないのに」
山も麓からスタートをして大きな木でゴールするというかけっこにハマっていた小学1年生の頃の2人。いつも接戦だが、この日は時雨が勝った。
「薫、転んだのか?怪我は?」
「うん、大丈夫だよ。血は出てない。ありがとう、時雨」
「………怪我してないならいい」
薫が笑顔でお礼を言うのを見て、時雨は少し顔が赤くなってしまう。今考えれば、この頃から時雨は薫に惹かれていたのかもしれないなと思う。彼女の言葉や行動、そして表情に一喜一憂していた。
照れているのがバレないように、時雨は「俺が勝ったから、今日は何して遊ぶか決めるならな」と、少し強い口調で言ってしまう。けれど、薫は気にすることも彼の変化に気づくこともなく、「うん。決めていいよ」と言うだけだった。子どもの頃から鈍感さは健在だった。
「じゃあ、木登りしよう!」
「うん!」
時雨の提案で、大きな木に登ることに決まった。よく登っており、2人はこの木から見る自分達の町が大好きだったのだ。
「ねぇ、この木は「クスノキ」って言うんだって。お母さんが教えてくれたの。漢字だと、木に南って書くんだって。時雨、知ってた?」
「へー!知らなかった。楠かー。じゃあ、ミキだね」
「え?」
「だから、南の「み」に木の「き」でミキ。名前はミキだ!」
「………え?楠だよ」
「いいの。ミキに行こう!とか名前で呼べるだろ?」
「なるほどー………わかった。じゃあ、これからは、この木の事はミキね!」
木に名前をつける何て、バカだなと自分でも思いながらも今はそれがよかったと思っている。ミキが喜んでくれたのだから。