薫はミキの胸に抱きついた。
 彼の香り、白檀に似たウッド系の香りがする。そして、温かい体温も感じる。それなのに、どうしてこんなにも悲しいのだろうか。

 強く強くミキは抱きしめる。
 すると、ミキは薫の頭を優しく撫でてくれる。


 「泣かないで………楽しい誕生日にすんだろう?」
 「………だけど、ミキが………」
 「綺麗で優しい薫とデートが出来て、手を繋げて、薫が好きなプラネタリウムを見れて。最高に幸せな時間だった。薫、ありがとう」
 「…………ミキ………」


 薫がミキの顔を見つめる。
 そして、ゆっくりと空いている手で彼の緑色の髪に触れる。少し冷たいけれど、優しくふわふわとした髪。茶色の頬は温かい。
 今は目の前に居るのを感じられるのに、終わりが近い事を感じらるのだ。それは勘に似た予感なのだろう。

 ミキは薫の頬に触れる。
 そこには薫が流した涙があったのだろう。 
 そのままミキは頬に触れる。「柔らかくて、温かいね」と言い、嬉しそうに笑顔を見せる。


 「………薫、愛してるよ。………また、夢で会えるといいね」
 

 ミキは悲しみを堪えながらも、いつものように少年のように眩しい笑顔を見せた後、薫に顔にゆっくりと近づいた。
 そして、薫の頬に小さなキスを落とした。

 頬のキスは「親愛」の証。

 まさしくそんな証を感じられる、とっても優しくそして慈しむようなキスだった。

 薫の頬からミキが離れていく。
 彼の温もりは、冷たい風が全てさらってしまった。