「これ、薫にプレゼント。僕の宝物だよ」
 

 ミキはコートのポケットに手を入れ、そこから何かを取り出して、薫の手の上に置いた。
 薫の手のひらが、ほのかり温かくなる。

 薫はミキからのプレゼントを見つめた。そこには、透明な宝石のような石があった。表面はつるつるしており、うっすらと茶色に染まっていた。そして、この中に閉じ込められるように何かが入っている。


 「………綺麗………宝石みたい………。中に入っているのは………葉っぱ?」
 「そうだよ。琥珀みたいでしょ?」
 「琥珀………本当に、綺麗ね………ありがとう、ミキ」
 「うん。あのね、………その葉は、僕の葉だよ。だから、大切にしてね」
 「え………」


 薫の手を取り、ミキはもう片方の手を琥珀を包むように握らせてくれる。そして、ミキもその手の上に自分の手を乗せる。


 「君が忘れてしまっても、あの頃の記憶は宝物だから。僕がずっと覚えているよ。薫がとても大切で大好きだった。………ううん、今でも大好きだ。………だから、こうして1日だけ君を独占したんだ。大切な誕生日なのに、ごめんね」
 「………ミキ、イヤだよ………いなくならないで………」


 薫は彼が目の前から、そして頭の中からいなくなってしまう。そんな予感がしたのだ。
 薫の目から自然と涙が浮かんでくる。それを見て、ミキはニッコリと笑った。
 

 「大丈夫だよ。僕はずっと君の傍にいるよ。それに………薫には本当のペルセウスが居るだろう?」
 「そんな………ミキが守ってくれるでしょ?そう言ったよね。だから、どこにもいかないで………いなくならないで」