七島は胸ぐらを掴んだまま、かなりムッとした顔をして私をにらんでいる。

ーーー怒ってる、七島。

「お前、なんの真似だって聞いてんだろ」


「そ、そっちこそっ、いきなり私になにかする気だったでしょ!」

「俺がすることに文句あんのか?!」

「は?あんたって何様なの?リアルにバカ殿じゃん」

「なんだと?!だれがリアルバカ殿だ!」

胸ぐらを掴まれてからは、私も完全に戦闘モードだった。

ーーー馬鹿な奴。私を見下して勝てると思ってんの?!

七島のすごんだ顔と睨み合っていた。

胸ぐらを掴まれているため、つま先だけが地面についている状況だ。


「おいおいっ、喧嘩か?」

声は聞こえていたが、ここで目を逸らしたら負けになりそうで、七島の瞳から目を離さずに睨み続けていた。

「シッチー、早速、女と喧嘩かよ」

「黙れ、健太郎。こいつ、俺にはむかいやがった。それに、先に手を出してきたのは、このクソ女だ」

どうやら、公園に来たのは、七島の友人で先程ホイッスルを吹いていた片桐のようだ。

七島も私から目を逸らさないで睨んでくる。

「え?シッチーやられたの?あーー、だから、ほっぺた赤くなってんのかよ。かわいそーシッチー」

片桐は、近づいてきて私と七島を見比べた。

「シッチー、大丈夫か?」

片桐は、七島の隣に来て七島の頭を撫でた。

「かわいそーにね。シッチー。だから、いつも通り美人な女にしとけばよかったんだよー。こんなのじゃなくて」

私に向いた片桐は、大声で文句を言ってきた。

「ふざけやがってっテメェ!うちのシッチーの綺麗な顔に傷ついたらどぉ責任とるつもりだよっ」

二人の男にすごまれていた時、自転車がものすごいスピードで突っ込んできた。

つっこんでくる自転車に驚いて、七島は私の胸ぐらから手を離して、片桐と共に後ろに飛びのいた。

「何やってんのよ!!あんたたちっ、舞から離れな!」

突っ込んできたのは、七島の自転車に乗ってきた沙也加だった。