「ヤバいよ。やめときなって面倒だから」

沙也加の腕を強く引っ張ってみた。



「いい加減頭にきてたのよ。あいつ、一体何様なのよ。戦国のお殿様じゃあるまいし!」

完全に沙也加は校門を突破する気でいる。




これは、やばいっ!



七島が校門に立ち始めてから早1年と3ヶ月目。

そろそろ美人な沙也加の順番がきてもおかしくない。


「沙也加、私すごく嫌な予感がするんだってばさー」

この嫌な予感が当たらないといいけど。

ジリジリと照り返す暑さのせいか嫌に沢山の汗が背中をつたう。



恐る恐る七島を窺ってみた。

七島は門番のように偉そうに仁王立ちして、門から出ようとしている女のコを全てチェックしている。

視線と首を、まるで怒っているニワトリみたいにせわしなく動かしていた。



「仮に止められたとしても、あたしはあんな奴のいいなりにはならないから。舞もそうでしょ?!

この馬鹿げた習慣をやめさせてやる!

それに、偉そうにさー、あんな真ん中に自転車置いて立ってんのは、すごい迷惑じゃん。あいつだけの校門じゃないってーの」

短気な沙也加は、真っ直ぐ前を向いて校門を通ろうとしていた。


沙也加っ、君は正義感のあるつお〜いコだよ。それは、わかる。

でもねー。



七島のしていることは、とても迷惑なんだけど、あえて戦わなくてもここは、少し様子をみて……。


私はフニャフニャの平和主義の女だ。あえて自分から戦いには挑みたくない。

あーあー、沙也加は、言い出したらきかないからね。

緊張しながらイキりたっている沙也加の後ろにちょこちょこと続く。


私の全体的に冴えてない勘がこんなところで当たらないといいけど。


体全体でハラハラしながら七島を意識していた。

神様、どうか、私たちが校門を無事に通れますように。


沙也加の後に続いて、ささっと校門を通ろうとした時


「あああっ!そこのお前っ!」

と七島から少し大きめな声が発せられてしまった。