「ふぅむ・・・
証明できるのか?」
領主様が、静かに問う。
「結界を張っても?」
俺は、ややぶっきらぼうに許可を取る。
ざわり、と領主様とその後ろの執事が身構える。
ですよねーー。
領主家の客室で その客が「結界」を張る。
その重要さはわかっているつもりだ。
一応ね、俺 「王子様」でがっつり「貴族」とか知ってるし。
「それは・・・どういう意味で・・」
領主様は、少し考えてから
にらむように俺に視線を向けた。
そりゃそうだ。
「案ずるな。私が、保証しよう。」
ウルーチェ先生が、すっと立ち上がって笑いながら手を挙げた。
くるり、と誓約書の陣を展開する。
「賢者ウルーチェの名において
互いに不利になるような攻撃および支配はせぬと誓う。」
しゅわん、とはじけるような音を立て、陣がはじけた。
わお、最上級の誓約書じゃん。
「・・・賢者ウルーチェ様がここまでなさること、ですか・・・
よろしでしょう。許可する。」
「ありがとうございます。
では・・・
申し訳有ませんが領主様方も結界をお願いしますね!」
きょとん、としているが仕方ないだろー
少しでも結界が透けたら困るし。
ジョイルに光の結界を展開してもらって、
その後にフィロスも、
もちろんウルーチェ先生にも張ってもらう。
こんなに張ってるのに足りぬのか?とつぶやかれながら
領主さまと、その息子さんの領主代理にもやってもらう。
「えーーと、大丈夫かな。
ウルーチェ先生、結界用の魔石とかもってないの?」
「あるぞ。
もう部屋の四隅において展開しとるわ。」
さすが、準備がいいね。
結界枚数にしたら、8枚重ね。すげーな。
んじゃ、外します。
耳飾りをくいっととる。
ぶわ、っと自分の中で魔力がめぐる。
あえて、きらきらと魔力を分散するようにあふれさせる。
一瞬、目を閉じて
ゆっーーくり開く。
えぇ、もちろん、優しそうな笑顔も貼り付けて。
あえて、勿体着けて口を開く。
「改めて、自己紹介をしよう。
フランテチェスコ=ルアーニルだ。」
ざざっと、元騎士であるフィロスが立ち上がり
膝をつく。
ジョイルも、それに倣う。
賢者ウルーチェは軽く礼をして、領主と俺を見比べる。
「ほ、んもの・・・?」
「いや、しかしながら、フランチェスコ第二王子は、体調不良で・・・?」
領主代理と執事さんは、戸惑いながら、
俺を見る。
本物ですよーーみてよーこの圧倒的な光の魔力。
意識してキラキラと、魔力を充満させる。
領主は、静かに、手を払って後ろに控えている二人を鎮める。
そして、ゆっくりと立ち上がり、
深々と臣下の礼をとる。
さすがだなぁ。こういうときも動揺を見せないのがさすが貴族って感じだよ。
迫力のあるおじさまの礼にこちらが圧倒されないように
ぐっと腹筋に力を入れる。
「・・・お久しぶりでございます。
ずいぶん前に拝見させていただいたのですがーー」
「よい。社交辞令も挨拶も抜きにしよう。
貴殿にあったのは、私がずいぶん小さかっただろう?」
精霊様がごろん、と俺のいるソファまで転がってきた。小動物みたいでかわいいな。
こほん。と軽く咳払いして
しっかりと正面を向く。
「さぁ、話をしようか。」
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