領主様は 苦々しい顔で
小さく、ため息をついた。
それを横目に
ローディゴール領主代理は
淡々と続ける。
「・・・私の、母と 祖父母は・・・
数年前、王都へ行く際 連れて行った精霊が
急に消滅しその爆発に巻き込まれて・・・死亡しました。
祖父も、母もある程度の浄化の術を身に着けておりました。
魔石もいくつかあったはずです。
それなのに、です。
たまたま王宮にいるときでありました。
何人か「光の術者」がいる王宮でです。
精霊にも居心地のいい 清められた気が充満している王宮です。
そこで、精霊が消滅したのです。
精霊を連れていくというのは
何があるかわからないのです。」
・・・ちらっと、ウルーチェ先生のとこを見る。
王宮で爆発・・・?
あったっけ?
数年前って、俺もちゃんと「フランチェスコ第二王子」として
きらきらと隙あらば光の魔力を降り注いでたのに?
ウルーチェ先生は、ちょっと悲しそうに笑う。
あーー、これは極秘な奴だな。
よしよし。察した。
ん?あれ?
なぜ、ウルーチェ先生・・・「賢者ウルーチェ」がここにいる?
俺らが連絡したから?
俺らの身分証明?
そんなのウルーチェ先生がわざわざ来なくてもいいことだ。
いくらでもやりようはあるし。
精霊の説得?
というのは、いささか不自然すぎる・・・
俺は思わず、はぁ。と深いため息をついた。
「ウルーチェ先生・・・
これ・・・この「精霊をフィロスが連れて旅立つ」というのが
なにかしら、「必要条件」なんですか?」
にやり、とウルーチェ先生が笑う。
ほーーらーーー
「聞きたいか?双子石の炎を操る舞人であるフィロスが・・・」
「あーあーあーー
やめろって。機密事項を聞いて無理やり
巻き込まれたくないって。」
俺とウルーチェ先生のやり取りを
領主様は ぽかんとした顔で見守っている。
そりゃそうだよなぁ。
こんな駆け出し冒険者のチェースが
国の「賢者ウルーチェ様」に対等に口をきいてるし。
はぁ、面倒だなぁ。
絶体、「めんどい」やつじゃん・・・
でもなぁ。
きっとこの精霊とフィロスは別々にしたら、ダメなんだろうなぁ。
うーん。
仕方ない。
「えぇっと、領主様。領主代理様。
僕たちにこの精霊を連れだす許可を。」
「!!だからそれは」
「わかっています。精霊様に、安定した「浄化」の状態
でしたね・・・それを、常に作り出せます。」
俺はちらり、とジョイルに目をやった。
ジョイルのちょっと紫がかった目がキラリと光る。