領主様はごほん、と軽く咳払いをして
貫禄たっぷりに俺らを眺めた後
「このセリア=モントレー領の領主を務めておる。」
と、簡潔に自己紹介をした。

俺たちはちらりとフィロスをみて
うなずいた。

「私は フィロスと申します。
 騎士の資格はもうはく奪されましたので
 家名もございません。」
「・・・ジョイル=シャボンワークと申します。
 冒険者でシャボンワーク家の次男でございます。」
「冒険者のチェースといいます。」

簡潔な自己紹介だったが
領主様は
ふぅむ。と 少し戸惑ったように
「リーダーはチェース君、君なんだな?
 意外だな。」

観察力すげーな。
一瞬の目くばせで分かったのか。

ちょっと驚いたらウルーチェ先生は
楽しそうに しゃがれた声で笑った。

「しかしながら、チェース。
 確かに指示とかはしてないけどなぁ・・・
 もともと「罪人」であった騎士フィロスを
 いかにも「貴族です――」って魔力の高い髪の毛を
 隠しもせず、品のいいジョイル=シャボンワークを連れて
 よく問題にならなかったもんじゃの?
 なぁ、「冒険者チェース」くん?」

にや、っと ウルーチェ先生が笑う。
ごもっともすぎて
言葉に詰まる。

「えーー。ごもっともです。申し訳ない。
 そこまで考えつかなかったというか・・・」

「いえ、チェースのせいではなく。
 すいません。賢者ウルーチェ様。
 私がすぐに魔力を抑えるようにしたり、
 変装すればよかったのですが・・・失念しておりました。」

フィロスが静かに頭を下げると、精霊が
するり、とフィロスの頭にのっかる。
どうやらフィロスから離れる気は無いようだ。
なついてるなぁ。


こほん、と領主様が咳ばらいをして
「して、賢者ウルーチェ様。
 こちらの冒険者チェースとやらと仲がよろしいな。」
「あぁ。私がかわいがっている・・・・
 優秀な教え子じゃからなぁ。」

「しかしながら、許可できませんぞ。
 精霊は、森へ返します」
「あー、強情な年寄りになったのぉ。小僧。」

「なんとでも。
 私の両親と、妻の事件を忘れたわけじゃ、ないでしょう?」
「当り前じゃ。
 それも踏まえ、こ奴らで「大丈夫」だと言っている。」


事件ってなんだ?
ちらり、とフィロスとジョイルを見るが
軽く首を振られた。

「精霊の消滅による爆発に伴った事故ですよ。」

領主の後ろに控えていたローディゴール領主代理がぼそりとつぶやいた。