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この東の領地を治めるモントレー家の当主は
ふいに大きな魔力を感じた。

「・・・森の入り口のほうか・・・
 ギルド・・・?」

「旦那様?」

初老の側近は受け取った書類を束ねながら
急に立ち上がった当主を見つめる。

「・・・これ、は・・・?」

この屋敷にも森の入り口にも
ギルドにも「結界」が張ってあり
その中で膨大な魔力を使ったらわかるようになっている。

しかし、
いまギルドには彼の後継者である息子が
精霊の件で呼び出されたはずだ。

一気に膨れ上がる魔力を感じる。


何かあったのか?

思わず、ギルドのほうを見る。

ふと、その膨れ上がった魔力を目がけるように


遠くから魔力が飛んでくるような感じがして
誰かが「移転」を使ったのだと感じる。

あの、結界を重ねがけしてあるギルドの部屋に移転・・・?
移転をして「来た」
なんだ?!

と思ったら、
すぐに、重厚な机の端においてある伝令用の魔法が鳴る

当主が触れるよりも早く、
秘書であり側近の初老の男が素早くそれに触れる。

『ーーー久しいな!!
 今、そちらのギルドにいる。
 屋敷に向かうから結界を緩めよ』

幼女のように無邪気でな声が響く。

「は・・・?申し訳ありませんが・・・」
初老の男は戸惑うように返事を返そうとする。

『ーーー賢者ウルーチェの名において、命ずる。
 結界を緩めよ。セリア=モントレー領主殿。』

ぶわっ と、声に乗せられた魔力が空気を振動させて
その領主の執務室を揺らす。

二人は目くばせをして、頷く。
声を発したのは領主である。

「・・・一分ほどお待ちください。
 すぐに対応いたします。
 そちらに、我が息子 ロディゴールがいるはずです。
 案内をさせましょう。」

『ははは。無理ってすまんな。
 では、きっちり一分後移転する。』

ぶつり、と魔法具の通信がきれて、
ふ、と 二人は息をついた。

「・・・っ。急げ。
 彼女を待たせるな。
 結界の件は任せた。ワシはロディに指示をする。」

当主である彼はすぐに、我を取り戻して
姿勢を正す。

すぐに息子と直接やり取りができるイヤホン型の魔法具を取り出して
指示する。

息子のほうも、賢者であるウルーチェ様に
圧倒されたのであろう、動揺した声で

すぐに案内します。

とのことだ。

いったい何が起こっているのか・・・
ただの精霊様を森に戻すだけではなかったのか。

精霊様の説得に失敗・・・?


ギルド内まではまだ浄化の魔法陣がかけられているが・・・それでも森の中とでは雲泥の差だ。それですぐに調子が悪くなるから
精霊様のほうから森に戻るんだが・・・精霊が離れたがらないって・・・なんだ?

動揺を隠しながら
当主らしく、
客を迎える用意をするの為 ふぅ、と小さく息を吐くのであった。