ふー、と
領主代理のローディゴール=モントレーさんがため息をついた。
ピリッと魔力が揺れるのがわかる。
「・・・・質問する。
あなたは、「騎士フィロス」で間違えないか?」
明確な殺気がローディゴール=モントレーさんから発せられる。
ギルド長のジャイロはすっと、構えた。
フィロスは、困ったように笑う。
「・・・失礼ながら、私はもう騎士ではございません。
ただ、脱獄などもしておりません。
名を隠してもいませんし・・・」
あーーこれは俺のミスだな。
考えなしに変装もさせず フィロスを連れていたから・・・
少し考えればこいつの魔力の高さですぐに
貴族だということがわかるのに・・・
どう返答しようかと思っていると、
隣のジョイルが すっと手を挙げた「発言しても?」
「・・・どうぞ。」
「えぇと、まず、僕は冒険者としても登録しておりますが
正式には ジョイル=シャボンワークと申します。
シャボンワーク家の次男です。
えぇと、少し前にシャボンワークの町で「はなまつり」が
開催されたのはご存じでしょうか?」
領主代理とギルド長はかすかに頷く。
「毎年「光の術者」をお願いしているんですが、
今年は、「賢者ウルーチェ様」でした。
彼女が・・・彼、フィロス様の罪の軽減を認め、
僕たちと「旅を」ということで 一緒にいるのです。」
「賢者ウルーチェ様が?!
・・・しかし 元罪人としても、
そもそも、我が領地の精霊を連れて行くなどと・・・」
いやいや、連れて行くっていうか、
この精霊様が離れないんだって。
困ったようにフィロスは精霊様を頭からつかんで優しく
抱きかかえる。
まるっきり、猫だなぁ。
フィロスは、優しく精霊に話しかける。
「精霊様。私には、
あなたに仕える資格はありませんし、こちらの領主様や
ギルド長も、精霊様のことを心配していますよ。
森へお帰りなさい?」
『ふぃろすの近くは、気持ちいいのにー?』
精霊様はしょんぼり頭を下げる。
ギルド長は、ずいっと精霊の近くに迫って
じっと、精霊を見つめる。
「精霊様。森を離れると、力を出せませんぞ。
ぐったりとして、力がなくなって消滅してしまいます。
・・・精霊様が消滅するとき 周りを巻き込んで
爆発や突風が巻き起こります。
そういう危険性があるから、許可は致しかねます。」
『消滅?ふぃろすは大丈夫
だって、ちぇーすと同じでつながってるから
ずっと、光も一緒だから、綺麗なのにあったかいの。
ちぇーすも ぎゅーーっとしなかったら もっと
気持ちいいのに。』
精霊様はぐるりんと体を曲げて、
ぴょん、と 跳ねて 俺の頭の上に乗る。
「あー俺?光?ダメですって。ごめんね、精霊様。」
元の姿に戻ってしまう。