靴を脱いで、軽くズボンの裾をたくし上げる。
「あぁ、綺麗だ。」
ちゃぽん、と
泉に足を浸す。

「チェース君、あまり奥に行くと危ないですよ。」

「はーい。フィロス。
 あ、あれかなーー?とってくる」

はい、荷物持ってって。
と言いながら カバンと、上着を脱ぎ棄てて
フィロスに渡す。

ざぶん!

水しぶきが広がる。


「ちょ、チェース!!
 フィロス様。これもお願いします。僕も行ってきます。」

慌ててジョイルも上着と靴を脱ぎ棄てて飛び込む。





俺さぁ、いわゆる学校に通ってた時に
友達っていうか、一応身分的には『従者』的な公爵家の友達がいたわけよ。

そいつが言ってたんだよな。

『うちの屋敷の近くの森の奥の泉に咲く
 ビュランスの花が一番好きですね。』
『え?俺、おいしいもの聞いたんだけど』
『はい、食べれるんですよ。
 しかも、手折ってしまうとすぐに散ってしまうので
 そのまま食べるしかありませんので、
 献上は致しかねますが…』

水中に咲く花か、
色は綺麗な黄色らしい。
甘いのか?
さっぱりした風味らしい?
へーーそのまま食べるのか?デザート?


『へぇ、お前の領地に行ってみたいな』
『ぜひ。屋敷をあげて、おもてなし致します』

みたいな話だったんだよな。
味の創造はできなかったけど
不思議な花もあるんだなと思ったんだよな。

多分、このはな。

ハスのような、
でも、綺麗な黄色。

思わず、
学園で隣で勉強していた友人を思い出す。
あぁ、あの時は俺「第二王子」として頑張って・・・は、無かったんだけど、そんな俺につかされても、ふてくされることなく
勉強も対人も 優秀だったあいつがよぎる。

ざぶざぶ、と
水をかき分けてその花をそっと触る。

「・・・チェース。
 いきなりなんですか?!」

「お、ジョイル。この花だと思う!
 俺が気になってたやつ。
 あ、折るなよ?すぐに散るらしいぞ。
 花びらだけ取って食べるんだと。」

「えーー?食べれるんですか?」

「た、ぶん?」

「・・・はぁ。じゃ 僕が毒見しますので・・・」

「いいって。俺がやばかったらすぐに
 回復よろしくね?」

「ちょ!!!」

ぱく。

花びらを一枚口に含む。

ふわぁああぁ。

口の中で静かに溶ける。

レモンティーのような清涼感。
ほんのりとした自然の甘味。
何よりさぁっと綿あめのようなくちどけ。

俺、結構おいしいスイーツ食べてきたと思うけど
これは・・・新感覚だな。

「・・・おいしい。
 おいしいよ!ジョイルも食べてみろって。」

「・・・えーー?」

眉間にしわを寄せたジョイルもぱくりと食べる
「あ、ほんとだ。
 おいしい・・・。」


池の端からフィロスが声をかける。

「チェースくーーん?ジョイルくーーん??」

「フィロス! お前も食べてみろよ!」

「食べ・・・?」