ここにわたしが居なくても、世界は簡単にまわるんだろう。
みんなの視界から、わたしの姿が消えて。
みんなの音から、わたしの声が消えて。
みんなの記憶から、・・・わたしが消える。
"白石凜"
あぁ、そういえばそんな人もいたかな、くらいの僅かな記憶となって、わたしはこの世界からなにも残すことなく消えていくんだろうな。
ここで笑っているみんなは、どんな大人になるんだろう。
どんなに明るい未来を描くんだろう。
少し先を歩くみんなの後ろで、一人だけ立ちすくんでいる自分が見えた。
・・・この胸の痛みは、病気の痛みじゃない。
はは・・・しぶといなぁ。
わたしにはまだ、こんなにも邪魔くさい感情が残っていたなんて。
「凜、置いていかれるよ」
・・・ううん、きっと違う。
この感情を呼び戻したのは、きっとあの日、きぃくんに出逢ってしまったからなんだ。
それが良いことなのか悪いことなのか、
わたしにはよく分からない。