ねぇ・・・って凜の方を見ると、瞬きを繰り返しながらよく分からない表情で俺を見ていた。
・・・え?
「・・・えっと、朝起きたらおはようで・・・夜寝る前はおやすみ、って、言ってほしい」
「・・・あ、あー、うん。・・・分かった」
毎日の起床後と就寝前って意味ね。
言われたらそれはそれで納得だけど、うん・・・さっきの俺、何?
思い返したらネタじゃん。ボケじゃん。馬鹿みたい。
「天然すぎじゃない?マジで。急にそれはツラい」
「うるさい」
「へへ・・・きぃくんかわいい」
「いや、どこも可愛くないし。・・・じゃあ帰る。おやすみ、凜」
「おやすみ・・・きぃくん」
その場から逃げるようにして、俺は二人の家を出た。
毎日の「おはよう」と「おやすみ」の約束。
・・・凜の不安は、ここにあった。
あと何回、おはようと言えるか分からない。
あと何回、おやすみを言えるか分からない。
眠ったまま、目覚めなくなってしまったとき・・・最後の会話を覚えていたい。
・・・だから、お願い、って。
そんな意味に、俺は聞こえた。