俺はポケットからメモ帳とペンを取り出し、少女と一緒に図鑑をめくった。
「・・・漢字は難しいかもしれないけど」
そこに綴った漢字の上に、大きくひらがなを書いた。
開いた図鑑のページには、小さな花弁をつけた紫色の花。
「・・・り、ら?」
《 凜愛 》
それが、俺から君に与えた名前。
「この花はライラックっていうんだけど、フランス語でリラって言うんだよ」
「りら・・・」
ライラックの花言葉は、『思い出』『友情』。
これから先、たくさんの思い出を作れるように。
たくさんの友達に、出会えるように。
そんな願いをこの名前に込めたこと、まだ四歳の君には難しいから
大きくなったら、教えてあげよう。
図鑑一面のこの花を見つめて、
少女は嬉しそうに微笑んだ。