その日、面会時間を終えて帰っていく彼の背中を見送るのがすごく辛かったのは、こんな時間がもう二度と来ないことを悟っていたからなのかな。
・・・悲しくて、苦しくて、辛い。
心拍が乱れるからって極力抑えていた涙だって、止まってはくれなかった。
きぃくん、好き。
すごく好き。大好き。
そう言えただけで、わたしは恵まれていたのかな。
伝えたい想いは、じゅうぶん伝えられたかな。
きぃくんと入れ替わりで入って来た妃菜に支えられながら、わたしは久々にペンを持った。
思い出が詰まったノートをテーブルに広げて、夢中になって手を動かす。
「凜、私さ・・・看護師になったら、誰かを助けられるのかな」
「・・・ん、ぜったい、 できる」
「凜の絶対は・・・何となく、信用出来る」
妃菜の夢だって、きっと叶う。
昂くんや、蒼くんの夢だって。
みんなが進むのは別々の道かもしれないけど、きっとどこかで繋がっている気がする。
思い出を、忘れなければ・・・。