「・・・凜の、大切なもの」


俺は・・・凜から何かを奪った記憶はない。


ましてや凜の大切なものなんか、何なのかも知らない。

知らない上で、気付かないうちに奪ってしまっていたのだとしたら・・・


・・・すごく申し訳ない。



「あの子が生きたいって言ったのは・・・初めてなんだよ?凜は・・・優人が凜を想うのと同じくらい、お前のこと大事に思ってたんだよ!?」


"どうしてそれが分からないの!?" って、彼女は俺に言葉をぶつけた。


その勢いが物凄くて、荒ぶりすぎて昂生に宥められ、蒼は唖然としている。

・・・怖。


率直な感想は怖い、だったけれど、その後を追って来るのは勢いに乗せられ放たれた言葉。



『きぃくんがいなかったら、わたしいきていけない』


『きぃくんがいないとだめになる』


『きぃくん、だいすき』



・・・凜が俺を頼ってくれていたこと、その想いを、全く知らなかったわけじゃない。


少なくとも嫌われてはいない、好きで居てもらえていることも・・・身をもって知っていた。


笑顔を向けてくれたとき、俺はすごく嬉しかったんだ。