「・・・いやだ・・・」


ひとしきり泣いたあと、漏れた声は誰にも届くことなく、静かに消えた。


・・・このままサヨナラなんて絶対に嫌だ。


どうして居なくなっちゃうの?

どうして離れていっちゃうの?


きぃくんが居ない世界。

そんなところで生きていたって、わたしは少しも嬉しくない。


お願いだから・・・

わたしをおいていかないで・・・っ



「・・・先生、すこしだけ、外に出てもいい?」

「うーん・・・最近調子も良いし、大丈夫だよ。なるべく早く戻ってくるようにね」

「ありがとうございます!」


誰も居ないときに外に出たことは今までに一度もないけれど、特に怪しまれることなく許可を得ることに成功。


パジャマからゆるい普段着に着替えて、病棟の看護師さんに見送られながら病院を出た。


いつの間にか12月になっていて、外はだいぶ寒い。

だけどわたしには、この冷たい空気が心地よかった。


ずっと病室にこもっていたから、こうして動くと身体は重い。


・・・きぃくんのところに行かなくちゃ。


その一心で、限界に近づいていくこの身体を引きずるようにして、わたしは一人歩いた。