その静寂を破って何を言い出すかと思えば、『医者になれ』?

目の前のこの男は何を言っているのだろうか。


俺なんかが医者になれるとでも思ってるのか。



「今から一年間は勉強に回って、来年の受験で俺と同じ医大を受けてほしい。優人は俺の息子なんだから、絶対に頭は良いはずだ」



何も迷うことなく、ただ真っ直ぐに俺の目を見て淡々と話す男。


・・・お前は俺を置いてどこかに消えたんだ。


そのくせ今更、いきなり目の前に現れて、将来のことに首を突っ込んでくるなんて規格外すぎる。



この常識外れの大人を前に、俺はただただ呆れ、迷い、戸惑った。



そんな俺のことなんか見えていないかのように、男は続ける。



「・・・だいたいなんでこんな時間に帰ってくるんだ。仮にも受験生だろう、お前はいつから不良になったんだ、優人」



まるで今まで俺をしっかり育ててきたかのような口調で男は言った。