昼を過ぎて、妃菜が帰ってくるであろう時間帯が近づいてきた頃。

昼食後の薬を飲まなければいけないだろうから、俺は凜を起こさなきゃいけない。


・・・なんだか申し訳ない。



「凜、起きて。昼過ぎたから、起きて」

「・・・ん・・・やだ、ねる・・・」

「いや、寝ないで!妃菜に怒られるから、起きなさい」



優しく肩を揺らせば、一瞬だけ目を開けて、布団を引っ張って再び埋まっていったんだけど・・・。

見ての通り、全く起きる気はないらしい。


だが俺はめげない。

妃菜に怒られるという若干の私情を含みながら声を掛け続けると、堪忍したのか、布団から顔を出した凜と目が合った。



「・・・ん・・・きーくんが、ぎゅうしてくれるなら・・・」

「・・・え?」


『そしたら起きる』って、呂律が回っていないせいか、普段の数十倍は幼い喋りの凜。

あー・・・熱がえらい仕事してるなぁ・・・なんて思いつつ、俺は凜に手を伸ばした。


「わかったから、起きて」

「・・・きぃくん、だっこ」

「うん、おいで」


・・・とはいえ自力では起き上がれないだろうから、結局俺が自分から抱き寄せるしかないんだけども。


さっきもこんなことあったな・・・男にも母性本能ってあんのかな・・・なんて考えながら、腕の中の小さな体を抱きしめた。