「きぃくん、ちょっと・・・おこして」

「ん、」


俺に向かって手を伸ばしてくる凜の体を支えて、上半身を起こした。

一人で起き上がれないくらい体力が無いのは心配だけど、それはもう仕方ない。


壁に持たれかかって呼吸をする様子を見てると、相当弱ってる気がするけれど。

風邪引くたびにこんなふうになるのは・・・俺でも辛い。



「・・・きぃくん」


ナマケモノのようなスピードで俺のほうに体を向けた凜は、そのままゆっくり俺に抱きついてきた。


・・・熱い。


凜の身体全体から伝わるものすごい熱。

この子はこんなに小さかったっけ・・・って。


そんな思考の中で、俺は特に躊躇うことなく凜の背中に腕を回した。



「へへ・・・きぃくんはあったかいね」

「・・・凜は熱い、すごく」

「んー・・・わかんない。・・・わたし、きぃくんの匂いすき」


俺の胸に顔を埋めて言うけれど、ものすごく呼吸がしにくそうだから離れてほしい。

苦しいだろ、それ。


・・・でも、かわいい。



「きぃくんがいなかったら、わたしいきていけない」

「・・・大袈裟」

「んーん・・・ほんとう。きぃくんがいないとだめになる・・・」



弱々しい声。

弱々しい力で俺にしがみつくその姿が、どうしようもなく愛おしい。


こんな俺でも、凜にとっては・・・大事な存在、なんだろうか。


俺にとって、凜がかけがえのない大切な存在であるように。


彼女にとっての自分もまた・・・そうなのかもしれないと、ほんの少し、俺は思った。