『生きたい』
死を受け入れていた凜からのその言葉は、一気に俺の頭を埋め尽くした。
凜が、生きたいって言った。
死にたくないって、泣いている。
どうしたらいい?
なにができる?
苦しむ凜に声をかけてあげられるのは、俺だけなんだ。
助けたい。
それでもやっぱり掛ける言葉は見つからなくて、俺は凜の涙を拭って優しく撫でた。
「・・・泣かないで。凜・・・俺と一緒に居よう」
「んっ・・・きぃくんのよこにいる・・・っ」
「横って(笑) ・・・ここに居るよ。ちゃんと居る」
俺の手を握って離さない凜を、俺はずっと撫で続けた。
この手が、この子が、俺に運んできたものは何だろう。
人が人に抱く愛という感情は、こんな感じなんだろうか。
凜が大切。
凜が必要。
凜を守りたい。
好きなんかより、もっと奥深く・・・何とも言えないこの感じ。
不器用な俺には伝え切れない思いを、どうにかして受け取って欲しかった。
「きぃくん・・・すき」
「うん」
「きぃくんは・・・」
そこまで言った凜は、"やっぱりいい" って俺から目を逸らした。
ちゃんと伝えたい。
上手く言えるかは分からないけど、今の俺に言えることなんて限られていた。
「・・・必要だよ、凜は。好きとか嫌いとか関係なく・・・人間として、大切だよ」
そう言えば凜は再び俺に向き直って、『わたしもだよ』って言って
泣きながら、笑った。