「テトロドトキシンってフグ毒ですよね?」

大河は驚き、藍は頷く。

「ええ。強力な神経毒で筋肉の末梢神経及び中枢神経を麻痺させ、人に対する致死量は一〜ニmgと推定されているわ。中毒症状は、食後二十分から三時間の短時間で現れる。その毒の強さは、青酸カリの千倍以上とも言われているわ」

「でも、遺体はフグを食べていなかったんだろ?」

如月刑事が戸惑う。村松かけるはフグなど口にしていない。胃から出てきたのは、米や野菜などだった。

フグはスーパーに行けば売られているが、もちろん毒のある内臓などは取り除かれている。ではなぜ村松かけるからテトロドトキシンが検出されたのだろうか。

「何者かがテトロドトキシンを村松かけるに投与したということか?」

如月刑事はそう考えた後、藍たちから離れて電話をかけ始める。おそらく部下の原光矢(はらこうや)刑事にだろう。

「俺はこの村の住民を調べる。テトロドトキシンなど簡単には手に入らない」