「とりあえず、ベッドに降ろすから。」

『すみません・・・重かったですよね?』


そう問いかけている途中で
保健室特有の固めのベッドにゆっくりと降ろされた。
足をブラブラさせたままベッドに腰掛ける格好になったあたしの左足首はさらにジンジンしてきてしまって。
それを気にするとまた心配をかけてしまうとわかっていながらも
あまりに痛さについ足首に目をやってしまう。


「こういうことするの初めてだから、重さとかわかららない。それより、病院で診てもらったか?この足。」

『・・・・いえ。』


あたしの足首は入江先生にも凝視されている。
更に腫れてしまっている足首の存在があたしに
“病院へは行きました” という嘘をつかせてはくれなかった。



「金曜日の夜だろ?捻挫したの。」

『・・・ええ、まあ。』

「今日、月曜日だろ・・・」

『土日・・・・・病院やっていないかと思って。』

「・・・まったく、お前ってやつは。」


入江先生は顔を上げ、そう言いながらあたしの顔を見て苦笑いを浮かべた。


この苦笑いはきっと
病院に行かなかったあたしに対してだけじゃない
入江先生にスキと言ったくせに
八嶋クンとの噂話を入江先生に尻拭いをしてもらわなきゃいけないようなことまでしでかしたあたしに対しても・・・だ


ホントあきられても仕方がない
とりあえず謝らなきゃ・・・・



『すみません、こんな騒ぎに入江先生まで巻き込んでしまって。』

「・・・・・変わらないな。高島は。」

『・・・・・・・・』


入江先生は戸棚にあったテーピング用テープを取り出し

「心配かけたくないとか、部活を休めないとか・・・自分のことを後回しにするところがさ。」

そう言った後、ふっと笑う。
仕事中はあまり見かけたことがない優しい顔で。



『・・・・・・・・・』


そんな顔しないで下さい
あたしのことを理解しているようなことを言わないで下さい

勘違いしちゃいますから

あなたにフラれたあたしなのに
どういう形であれ
入江先生の心の中にまだ、自分が居てもいいんだって・・・