それなのに入江先生は

「高島先生は怪我してるから。三角関係とかそんなんじゃないさ。」

焦った様子なんて微塵も見られず、冷静に生徒達へ応えた。


「じゃあ、八嶋先生と電車の中で抱き合っていたってのは?」

「新人歓迎会の帰りに足を怪我した高島先生を支えただけ・・・らしいぞ。こんなに腫れてるんだしな。ほら、下校時刻だから、お前らも早く家に帰れよ~。」

「は~い。」

「高島先生、お大事に~!!!!!入江先生さよ~なら~」


どうやらただのアクシデントという事実を知り
一気にテンションが下がったらしい生徒達は
素直にあたし達の前から立ち去ってくれた。


それと反比例するように全身に渡って熱を帯びてきたあたし。
すぐ傍で感じる入江先生の体温が余計にその状態を煽ってしまう。

はやく解放してもらわないと
あたしのこの心の動揺が伝わってしまう

こんなにも保健室が遠い場所と思ったのは
初めてかもしれない

このまま2人きりとかって
あたしの心臓が持たないよ



ガラッ!


「あれ?安倍先生、いないな。」

養護教員の安倍先生がいつも座っているデスクの上には
“本日不在。御用の方は職員室まで” と画用紙に書き込まれた立て札が置いてあった。

保健室にいるはずの安倍先生が
こういう時に限っていないなんて・・・